基礎知識

ピート(泥炭)とは?ウイスキーのスモーキー香を生む泥炭の正体と産地別の違い

たくみ

スモーキー=とにかく同じ匂い」と思われがちだけど、ピートの掘り出し場所が違うだけで“煙のレシピ”は驚くほど変わります。今回はアイラ島3地区にハイランド、オークニー、日本を加えて GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析) で覗き見。理屈はちょっと難しくても、ポイントさえ押さえれば初心者でもグラスの中の煙をもっと立体的に感じられるはず!

たくみ
たくみ

記事のまとめ(まずここだけ読めば OK)

地域香りの主役ひとことで言うと
南アイラハロゲン化フェノール+p-クレゾールヨード&正露丸の“病院”系 researchgate.net
中西アイラグアイアコール焚き火・BBQ スモーク
北東アイラシリンゴール潮キャラメルの甘煙
ハイランド内陸
(St Fergus / Tomintoul など)
シリンゴール>グアイアコール乾いた薪火 + ハチミツ whiskyscience.blogspot.comdramface.com
オークニーシリンゴール多めヘザーハニー&土っぽい甘さ
北海道(厚岸)シリンゴール高・クレゾール低白檀・柑橘の和風スモーク

ピートとフェノールの基礎知識

ピートって何?

ピート(peat)は、湿原で植物が半分だけ分解・圧縮されてできた“泥炭(でいたん)”のこと。乾かして燃やすと独特の煙が出るため、ウイスキーづくりでは麦芽を燻す燃料として使われます。

GC-MS って?

  1. Gas Chromatography(ガスクロ):煙の成分を時間差で分ける
  2. Mass Spectrometry(質量分析):成分ごとの“重さ”を測って特定
    → どの成分がどれだけあるか、ピークの高さで丸わかり。

フェノール類をざっくり3系統で覚える

系統主な物質香りのイメージ
フェノール/クレゾール系フェノール、p-クレゾール石炭、薬品、タール
グアイアコール系グアイアコール焚き火、ベーコン
シリンゴール系シリンゴール白檀、バニラ、甘い木

ワンポイント:ハロゲン化フェノール(ブロモ/クロロ)は海藻の影響で生まれ、ヨード臭の犯人。researchgate.net


地域別フェノール“指紋”を見てみよう

アイラ南岸(ラフロイグ・ラガヴーリン周辺)

  • ハロゲン化フェノールが突出 → 強いヨード香
  • p-クレゾールが高く“正露丸”要素も増幅

アイラ中西部(ポートシャーロット周辺)

  • グアイアコール優勢で焚き火&ベーコン系
  • ヨード臭は控えめでスモーク自体が主役

アイラ北東部(カリラ〜ブナハーブン)

  • フェノール・クレゾール・グアイアコールがバランス型
  • シリンゴール高で甘塩キャラメルの後味

ハイランド内陸ピート(St Fergus/Tomintoul)

  • 内陸なので海塩・ハロゲン分は少なめ
  • 木質植物が多く シリンゴール比が高い → 乾いた薪火、蜂蜜、ハーブ様の甘さwhiskyscience.blogspot.comdramface.com
  • アイラよりフェノール総量は低めだが“優しい煙”を作る

オークニー(ホビスターモア)

  • ヘザー(エリカ)由来のシリンゴールが豊富
  • 土っぽい甘煙と“ヘザーハニー”の組み合わせ

日本・北海道(厚岸湿原)

  • 自社ピート採掘(2020〜)で シリンゴール高&クレゾール低
  • 白檀・柑橘・旨味を感じる穏やかなスモーク

Q&A:よくある疑問をサクッと解決

質問短い答え
PPM が高いほど煙い?目安にはなるが、どのフェノールが多いかで香りは別物。
古いピートは香りが弱い?乾燥が進むほど煙は薄くなるが、深い層は窒素化合物が増え香味バランスが変化。
ピート香は熟成で消える?年月で減衰するが、木由来のバニラやカラメルと結び付き“丸く”残る。

ピート香は 「どの化学物質が多いか」→「どんな匂いに感じるか」 の順で決まります。
化学名を丸暗記しなくても、上の 5つのニオイキーワード(ヨード・正露丸・焚き火・白檀・ハチミツ)だけ押さえておけば、ウイスキーの煙をグッと立体的に感じられますよ。

たくみ
たくみ

ABOUT ME
たくみ
たくみ
モルトチェイサー
ウイスキーに魅せられたブロガー。自宅のコレクションを眺めながら、製法や歴史、テイスティングのコツをわかりやすく発信。初心者の疑問からマニアの探究心まで満たす記事を毎週更新し、グラスの向こうにある物語を一緒に追いかけます。
記事URLをコピーしました