ウイスキー各国の法律と特色を解説

ウィスキー🥃

こんにちは、たくみです。ウイスキーは国や地域によって、製法や使用する原材料、熟成方法などにさまざまなルールが定められています。これらの「法的定義」を知ることで、そのウイスキーが生まれた背景や個性をより深く理解できるはず。今回は、主要なウイスキー生産国ごとのルールと、それぞれの風味の特徴をまとめてみました。

スコットランド (Scotch Whisky)

項目内容
主な規制Scotch Whisky Regulations 2009(英国法令)
原材料モルトウイスキー(大麦麦芽)またはグレーンウイスキー(トウモロコシ、小麦などを含む穀物)
着色はカラメル以外不可
熟成スコットランド国内で最低3年間熟成
樽材オーク樽(容量700L以下)
アルコール度数ボトリング時に40%以上
  • スコッチウイスキーは「スコットランドで蒸留・熟成されること」「最低3年熟成」「オーク樽使用」などが厳格に定められています。
  • 容量700L以下という点も、英国法規で規定されています。

アメリカ (Bourbon Whiskey / Tennessee Whiskey)

バーボン (Bourbon Whiskey)

項目内容
主な規制米国連邦規則集 (CFR) Title 27, Part 5 Standards of Identity for Distilled Spirits で定義
原材料51%以上のトウモロコシ + 他の穀物(ライ麦、小麦、大麦など)
熟成チャード(内側を焦がした)・ニュー・オークバレルを使用
法定最低年数はないが「ストレートバーボン」は2年以上熟成
樽材新樽(ホワイトオーク)かつ内側を焦がした樽(容量に関する法律上の上限規定はない)
アルコール度数– 蒸留時: 80%(160プルーフ)以下
– 樽詰め時: 62.5%(125プルーフ)以下
– ボトリング時: 40%以上
  • バーボンは主にケンタッキー州が有名ですが、法的にはアメリカ国内であればどの州で造っても「バーボン」を名乗れます。
  • 新樽を使うことで、樽由来の甘みやバニラ香が強く反映されるのが特徴です。

テネシーウイスキー (Tennessee Whiskey)

項目内容
主な規制テネシー州法および連邦規則 (CFR) Title 27, Part 5 でバーボンに準拠
原材料バーボンと同様(51%以上トウモロコシ + その他穀物)
熟成チャード・ニュー・オークバレルで熟成(バーボンとほぼ同じ)
樽材新樽(ホワイトオーク)
アルコール度数ボトリング時 40%以上
  • バーボンとの違いは「リンカーン郡方式(サトウカエデの木炭での濾過工程)」を採用している点。
  • 代表的な銘柄としてジャックダニエル(Jack Daniel’s)などがあります。

アメリカン・シングルモルト・ウイスキー (American Single Malt Whiskey)

項目内容
主な規制2025年1月19日より、米国アルコール・タバコ税貿易局(TTB)によって正式なウイスキーのカテゴリーとして認定 (TTB公式サイト)
原材料100%モルト化された大麦を使用
熟成最低2年間、アメリカ国内で熟成
樽材最大容量700リットルの新樽または使用済みのオーク樽
アルコール度数– 蒸留時: 80%(160プルーフ)以下
– ボトリング時: 40%以上
  • アメリカン・シングルモルトは、100%モルト化された大麦を使用する点が特徴的で、スコッチのシングルモルトに近い製法が用いられます。
  • 2025年1月19日に正式なカテゴリーとして認定され、従来のバーボンやライウイスキーとは異なる独自のジャンルとして確立されました。
  • 代表的なブランドには、ウエストランド(Westland)、バルコンズ(Balcones)、ワシントン州やコロラド州のクラフト蒸留所の製品が挙げられます。

アイルランド (Irish Whiskey)

項目内容
主な規制Irish Whiskey Act 1980 および EU規定(EU Regulation 2019/787 等)
原材料大麦(発芽・非発芽)などの穀物
熟成アイルランド島内で最低3年間熟成
樽材木樽(通常はオーク樽)
容量700L以下
アルコール度数ボトリング時 40%以上
  • 3回蒸留が主流で、ピートをほとんど使用しないため、マイルドな口当たりになることが多いです。
  • 「アイリッシュ・ポットスチル・ウイスキー」など独自のスタイルが存在します。

日本 (Japanese Whisky)

項目内容
主な規制日本洋酒酒造組合「ジャパニーズウイスキーに関する表示基準」(法令ではなく業界自主基準)
2021年2月策定、2024年3月31日より本格運用
原材料麦芽を含む穀物(トウモロコシ、ライ麦など)
熟成日本国内で樽詰めし、最低3年間熟成
樽材容量700L以下の木樽
アルコール度数ボトリング時 40%以上
  • 近年まで明確な定義が存在せず、海外の原酒をブレンドしていても「ジャパニーズウイスキー」を名乗るケースがありましたが、表示基準の策定により、段階的に厳格化が進んでいます。
  • 山崎、白州、余市、宮城峡といった著名な蒸留所のシングルモルトが世界的に高い評価を受けています。

カナダ (Canadian Whisky)

項目内容
主な規制Food and Drug Regulations – Canadian Whisky (カナダ政府公式)
原材料トウモロコシ、ライ麦、小麦、大麦などの穀物
熟成カナダ国内で最低3年間熟成
樽材木樽(容量700L以下)
新樽/使用済み樽どちらも可
アルコール度数ボトリング時 40%以上
  • 「Canadian Whisky = ライウイスキー(Rye Whisky)」と呼ばれることもありますが、必ずしもライ麦が主原料とは限りません。
  • ブレンデッド主体で、比較的ライトな飲み口が特徴です。

その他の新興地域

インド

  • 主な規制: インド国内法や州法により定義が異なる場合があります。国際標準と異なり、糖蜜(モラセス)由来のスピリッツを「ウイスキー」と呼ぶケースもあり。
  • 本格的なモルトウイスキー: アムルットやポールジョンなどは欧米の基準に近い製法で作り、世界的なコンテストでも高評価を得ています。

台湾

  • 主な規制: 明確な国家基準は未整備。ただし、カバラン(Kavalan)などの蒸留所が世界的なコンテストで多数の賞を獲得。
  • 特徴: 熱帯気候の影響により熟成が進みやすく、樽由来の風味が短期間で濃厚になりやすい。

まとめ

  • 各国とも「最低熟成年数」や「原材料の構成」「樽材」「アルコール度数」などの定義が存在し、産地保護や品質の維持を図っています。
  • スコットランド、アイルランド、カナダ、日本などは「オーク樽」「容量700L以下」の規定が共通点として多く見られます。
  • アメリカ(バーボン、テネシー)では新樽の内側を焦がしたホワイトオーク樽を使用し、トウモロコシの比率などで独自性を明確にしています。

ウイスキーは法律や業界基準を守りながらも、各地域の気候・文化・技術が生み出す個性も大切にされています。こうしたルールを理解することで、ウイスキー選びやテイスティングがより深い楽しみになります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました